テニス選手がガットを緩く張る傾向にあるのは、「飛び」よりも「回転性能」や「ボールの保持時間」を重視するプレースタイルの変化が大きな理由です。特にプロツアーでは、平均テンションがかつての60ポンド前後から、現在は44ポンド前後まで低下していると言われています。
主な理由を詳しく見ていきましょう。
💡 緩く張ることで得られる4つのメリット
ガットを緩く張ることは、現代のパワフルなテニスにおいて、いくつかの重要なメリットをもたらします。
🌀 1. スピンがかかりやすく、ボールがコートに収まる
最も注目すべき点は、スピン性能の向上です。ガットを緩く張ると、インパクト時のガットのたわみと「スナップバック」と呼ばれる戻る動きが大きくなります。これによりボールにより多くの回転をかけることが可能になります。
強い回転がかかったボールは急激に落ちるため、強く振ってもアウトしにくくなります。一般的に「ガットを硬く張ればコントロールが良くなる」と考えられがちですが、現代では 「緩く張って回転でコントロールする」 という考え方が主流になってきているのです。
🛡️ 2. 守備範囲が広がり、ミスに強くなる
ガットが緩いとボールがラケットに食い込む時間(ホールド時間)が長くなり、面でしっかり捉えられなくてもある程度の飛びと方向性が得られます。そのため、体勢が崩れたときの返球や、強力なサーブのリターンなど、守備的なショットの安定性が向上します。
💪 3. 腕や肩への負担が軽減される
硬いガットはインパクトの衝撃がダイレクトに腕に伝わりやすいですが、緩いガットはその衝撃を吸収してくれるため、肘や肩への優しさにつながります。これは長いシーズンを戦うプロ選手にとって、怪我の予防という観点からも大きなメリットです。
🚀 4. 現代のラケットとの相性が良い
最近のラケットは大型化や高剛性化により、それ自体が非常にパワフルになっています。そのため、硬く張ってしまうとパワーが抑えきれず、ボールが飛びすぎてしまう場合があります。ラケットの性能を生かしつつ、スピンをかけやすい緩いテンションの組み合わせは、現代のテニスに適したセッティングと言えるでしょう。
選手によって異なる理想のテンション
とはいえ、すべての選手が極端に緩く張っているわけではありません。硬く張って正確なコントロールを重視する選手もいます。参考までに、2017年のデータですが、当時のトッププロのテンション設定を見てみましょう。
ロジャー・フェデラー: 縦57/横58ポンド
ラファエル・ナダル: 55ポンド
ノバク・ジョコビッチ: 縦57/横58ポンド
錦織 圭: 縦43/横41ポンド
ミロシュ・ラオニッチ: 縦44/横46ポンド
セレナ・ウィリアムズ: 66ポンド
このように、錦織選手やラオニッチ選手のように40ポンド台前半でプレーする選手がいる一方で、フェデラー選手やセレナ選手のように50ポンド後半から60ポンド台でプレーする選手もいます。これは、プレースタイルや求めるボールの質の違いによるものです。
自分に合ったテンションを見つけるには
ガットのテンションに絶対的な正解はありません。スピンをかけて安定したショットを求めるなら低めのテンション、ピンポイントのコントロールやフラット系の打ち込みを重視するなら高めのテンションが適しています。
一般的な目安としては以下の通りです。
40〜45ポンド: かなり柔らかめ。スピン重視で腕への負担を減らしたい上級者向け。
45〜50ポンド: 近年の主流。パワーとコントロールのバランスが良い。
50〜55ポンド: やや硬め。正確なコントロールを求める中~上級者向け。